代襲相続はどこまで続く?甥・姪やその子供まで?範囲と割合をケース別に徹底解説。

「先日亡くなった叔父の相続について、連絡がありました。叔父の兄弟である私の父は既に亡くなっているのですが、私が父の代わりに相続人になることはあるのでしょうか?」
「祖父の遺産分割で、亡くなった兄の子ども、つまり甥や姪も相続人になると聞きました。どこまでの範囲の親族が相続人になるのか、分からなくなってしまいました。」
相続手続きを進める中で、本来相続人となるはずだった方が、既に亡くなっているケースがあります。このような場合に、その亡くなった方の代わりに、その子どもなどが相続する制度を「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と呼びます。
この代襲相続は、「誰が」「どこまで」の範囲で相続人になるのかが非常に複雑で、多くの方が混乱するポイントです。特に、甥や姪、さらにはその子どもまで関係してくるのかは、大きな疑問点でしょう。
この記事では、代襲相続が認められる範囲とその相続割合について、具体的なケースを挙げながら、相続問題に精通した税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
そもそも「代襲相続」とは?
代襲相続とは、被相続人(亡くなった方)が亡くなるよりも前に、相続人となるはずだった子や兄弟姉妹が亡くなっていた場合に、その相続人の子どもが代わりに同じ立場で相続する制度のことです。
- 被代襲者(ひだいしゅうしゃ):本来相続人となるはずだった、先に亡くなった人(子や兄弟姉妹)
- 代襲者(だいしゅうしゃ):被代襲者の代わりに相続人となる、その子ども(孫や甥・姪)
この制度は、子の世代に不幸があった場合でも、その下の世代(孫など)に財産を承継させることで、世代間の公平を図ることを目的としています。
代襲相続が発生する3つの要件
代襲相続は、いつでも発生するわけではありません。被代襲者が以下のいずれかの理由で相続権を失っている場合に限られます。
- 相続開始以前の死亡:被相続人よりも先に、相続人となるべき子や兄弟姉妹が亡くなっている。
- 相続欠格:相続人が、被相続人や他の相続人に対する重大な非行(例:殺害、遺言書の偽造など)によって、法律上当然に相続権を失っている。
- 相続廃除:被相続人が、相続人からの著しい虐待や侮辱などを理由に、家庭裁判所に申し立ててその相続人の相続権を剥奪している。
【重要】「相続放棄」では代襲相続は発生しない
ここで最も注意すべき点は、相続人が自らの意思で「相続放棄」をした場合には、代襲相続は発生しないということです。相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったとみなされるため、その子どもが代わりに相続することはありません。
【ケース別】代襲相続の範囲はどこまで?
では、代襲相続はどの範囲まで続くのでしょうか。これは、亡くなった相続人(被代襲者)が「被相続人の子」なのか「被相続人の兄弟姉妹」なのかによって、結論が大きく異なります。
ケース①:亡くなった相続人が「子」の場合 → 孫、ひ孫へと無限に続く
被相続人の子が先に亡くなっている場合、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
さらに、その孫も先に亡くなっている場合は、孫の子(被相続人のひ孫)が再び代襲相続(これを再代襲といいます)できます。 このように、被相続人の直系卑属(子、孫、ひ孫…)については、代襲相続が下の世代へと際限なく続いていきます。
ケース②:亡くなった相続人が「兄弟姉妹」の場合 → 甥・姪まででストップ
被相続人に子や孫がおらず、両親などの直系尊属も既に亡くなっている場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
この兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子(被相続人の甥・姪)が代襲相続人となります。
しかし、甥や姪がさらに先に亡くなっていたとしても、その子ども(姪孫・てっそん)が再代襲することはできません。 兄弟姉妹が相続人となるケースでは、代襲相続は一代限り、甥・姪の世代で終了します。
ケース③:亡くなった相続人が「親」の場合
被相続人の親が相続人となるケースでは、代襲相続は発生しません。もし親が亡くなっている場合は、祖父母、曽祖父母…と、より上の直系尊属が存命であれば、その方が相続人となります。親の兄弟姉妹(叔父・叔母)が代襲することはありません。
代襲相続人の相続割合(取り分)は?
代襲相続人の相続割合は、亡くなった相続人(被代襲者)が受け取るはずだった分を、そのまま引き継ぎます。
【具体例】
相続財産6,000万円。被相続人の相続人が、長男、次男、三男の3人だったとします。
- 法定相続分は、各1/3(2,000万円)ずつです。
- しかし、次男は既に亡くなっており、次男には子どもが2人(被相続人の孫)いるとします。
この場合、次男が受け取るはずだった1/3(2,000万円)の相続権を、その子2人が引き継ぎます。したがって、孫2人は、2,000万円を半分ずつ、つまり各1/6(1,000万円)ずつ相続することになります。
- 長男:1/3(2,000万円)
- 三男:1/3(2,000万円)
- 次男の子A(孫):1/6(1,000万円)
- 次男の子B(孫):1/6(1,000万円)
代襲相続は手続きが複雑!弁護士に相談すべき理由
代襲相続が発生すると、相続人の範囲が広がり、手続きは格段に複雑になります。
- 相続人の確定が困難
代襲相続人を確定するには、亡くなった方全員の出生から死亡までの戸籍謄本等を全て集める必要があり、多大な時間と労力がかかります。 - 話し合いがまとまりにくい
相続人の数が増え、世代や家系が異なる人同士で協議をすることになるため、面識がなかったり、関係性が疎遠だったりして、遺産分割協議が難航するケースが多くなります。 - トラブルの火種が増える
不動産の評価額や、特定の相続人が過去に受けた援助(特別受益)などを巡り、意見が対立しやすくなります。
まとめ
代襲相続のルールをまとめると以下の通りです。
- 子が相続人となる場合:孫、ひ孫へと無制限に代襲する。
- 兄弟姉妹が相続人となる場合:甥・姪の一代限りで代襲はストップする。
- 相続放棄では代襲相続は起こらない。
代襲相続が発生すると、相続関係が複雑になり、ご自身たちだけでの解決は困難を極めることが少なくありません。こうした複雑な状況を未然に防ぐためにも、生前に遺言書を作成しておくことが最も有効な対策となります。
もし代襲相続でお困りの場合は、相続関係を正確に調査し、法的に整理した上で、円満な解決を目指すことが重要です。速やかに相続の専門家である弁護士にご相談ください。
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広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員