相続人の一人が行方不明…遺産分割協議を進めるための「不在者財産管理人」とは

「遺産の分け方を決めたいのに、相続人の一人と何年も連絡が取れない…」「戸籍を辿ったら、全く面識のない相続人がいることが分かったが、どこに住んでいるかも不明だ」
横須賀エリアにお住まいの方からも、このような行方不明の相続人がいるケースのご相談をいただきます。遺産分割協議は、相続人「全員」 の参加と合意がなければ、一歩も前に進めることができません。たった一人でも行方不明者がいると、預貯金の解約も不動産の名義変更もできず、完全に手詰まりになってしまいます。
この八方ふさがりの状況を打開するための法的な制度が「不在者財産管理人」 の選任です。この記事では、遺産分割を前に進めるための切り札となる「不在者財産管理人」について、その役割や手続きの流れを 税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
【大原則】行方不明の相続人を無視して遺産分割はできない
まず、絶対に知っておかなければならない大原則があります。それは、行方不明の相続人を無視して、残りの相続人だけで行った遺産分割協議は「無効」であるということです。「どうせ見つからないだろう」と勝手に手続きを進めても、後からその行方不明者が見つかった場合、遺産分割はすべてやり直しになってしまいます。不動産を売却してしまっていた、といった場合には、さらに深刻なトラブルに発展しかねません。
「不在者財産管理人」とは?その役割と権限
「不在者財産管理人」とは、行方不明の方(法律上「不在者」といいます)に代わって、その方の財産を管理し、必要な法的手続きを行うために、家庭裁判所によって選任される代理人のことです。遺産分割においては、この不在者財産管理人が、行方不明の相続人の代理人として遺産分割協議に参加します。これにより、相続人全員が揃ったのと同じ状態になり、協議を有効に進めることができるのです。
不在者財産管理人の主な役割
- 不在者の財産(預貯金、不動産など)の調査、管理、保存
- 不在者の代理人として、遺産分割協議や調停に参加する
- 不在者の利益を守る(不当に不利な内容の遺産分割案には同意しない)
不在者財産管理人には、行方不明者の法定相続分をきちんと確保する役目があるため、他の相続人が一方的に有利になるような分割案には応じません。あくまで公平な分割を目指すことになります。
不在者財産管理人の選任申立て。その流れと費用
不在者財産管理人は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要があります。
選任申立ての流れ
- 家庭裁判所への申立て
不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所に、選任の申立書を提出します。申立ては、他の相続人などの利害関係人が行うことができます。 - 審理・調査
裁判所は、申立書や提出された資料に基づき、本当に不在であるか、管理人を選任する必要があるかなどを審理します。 - 不在者財産管理人の選任
必要性が認められると、裁判所が管理人を選任します。通常、その地域の弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることがほとんどです。 - 遺産分割協議の開始
選任された管理人が、不在者の代理人として他の相続人との遺産分割協議に参加します。これにより、止まっていた相続手続きを再開できます。
選任にかかる費用
申立てには、収入印紙(数百円)や郵便切手代などの実費のほか、管理人への報酬の支払いに備えて、裁判所に「予納金」を納める必要があります。予納金の額は事案によりますが、数十万円から100万円程度になることもあります。
もう一つの選択肢「失踪宣告」との違い
行方不明の期間が非常に長い場合、「失踪宣告」という別の制度も選択肢になります。
失踪宣告とは
7年以上、全く生死が不明な場合に、家庭裁判所に申し立てることで、法律上「死亡した」とみなす制度です。
不在者財産管理人との違い
不在者財産管理人は、あくまで本人が「生きている」ことを前提に財産を管理します。一方、失踪宣告は本人が「死亡した」とみなされるため、その人に子供がいれば、その子が代わって相続人(代襲相続人)になります。どちらの制度を選択すべきかは、状況によって異なるため、専門家への相談が不可欠です。
相続人が行方不明でも、諦める必要はありません
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広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員