遺産相続に期限はあるのでしょうか?

遺産相続そのものには明確な期限はありませんが、相続に関連する手続きや選択には期限が設けられている場合があります。この期限を守らないと、相続人に不利益が生じる可能性があるため期限を意識しながら、相続手続きを行いましょう。
相続放棄と限定承認の期限
相続の方法として、以下の3つの選択肢があります。
単純承認
プラスの財産も負債もすべて相続する方法。法定期間3か月を経過すると自動的に単純承認とみなされます。
相続放棄
財産も負債も一切相続しない選択肢。
限定承認
相続財産の範囲内で負債を弁済する方法(全相続人(相続放棄した者を除く)が共同して行う必要があります。)。
相続放棄・限定承認は、被相続人が死亡したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条)。この期間を「熟慮期間」と呼びます。期間内に手続きを行わなかった場合、単純承認となり、負債も含めて全財産を相続することになります。なお、期限の伸長手続もあります。
税の申告と納付期限
相続税が課される場合、申告と納付には法定の期限があります。
相続の開始を知った日(通常は死亡日)から10か月以内に、税務署に相続税の申告と納付を行う必要があります(相続税法27条)。
また、被相続人が生前事業等で確定申告を行っていた場合は、準確定申告が必要となります。準確定申告とは、被相続人が生前に得ていた所得について、相続人が行う確定申告のことです。準確定申告は、被相続人が亡くなった日から4か月以内に税務署へ申告・納付を行う必要があります(所得税法124条)。
不動産の相続登記の期限
不動産を相続した場合、登記名義の変更(相続登記)が必要です。
2024年4月1日以降、不動産登記法の改正により、相続登記が義務化されます。相続を知った日から3年以内に登記を申請しなかった場合、過料が科される可能性があります。
未払いの税金や負債の清算期限
被相続人の税金や未払いの負債を清算する場合、債権者からの請求に応じて早急に対応する必要があります。放置すると遅延損害金が発生する可能性があります。
まとめ
遺産相続そのものには期限がないものの、相続放棄・限定承認、相続税や準確定申告の申告・納付、不動産登記などの各種手続きにはそれぞれ法定の期限があります。これらを守らないと、相続人に不利益が生じる可能性があるため、早めに手続きを進めることが大切です。
相続に関する不安がある場合や手続きが複雑な場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談することで、期限を確実に守りながら適切に進めることが可能です。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としている。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員