相続手続きはいつ頃から始めればいいでしょうか?

相続手続きは、被相続人(亡くなった方)の死亡後、なるべく早めに準備を進めることが望ましいでしょう。
相続放棄について、原則的に相続の開始を知ったときから3か月、相続税の申告については、原則的に相続の開始を知ったときから10か月で期限が来ることから、早めに手続きを進めるに越したことはありません。
ただし、すべての手続きを即座に行う必要はなく、それぞれの手続きには適切なタイミングや期限があります。
死亡届の提出と葬儀
まず、被相続人が亡くなったことを役所に届け出る必要があります。この死亡届は、死亡後7日以内に提出しなければなりません。また、葬儀の手配なども初期段階で行う重要な手続きです。
遺産の調査と確認
遺産の全体像を把握する作業は、死亡後1~2か月以内を目安に始めるのが一般的です。四十九日法要の終了後に始めればよいでしょう。
具体的には、以下の情報を収集します。
・銀行口座や不動産などの資産状況
・借金や未払いの税金などの負債
・遺言書の有無
遺言書がある場合は、家庭裁判所で遺言検認の手続(公正証書遺言の場合は不要)が必要となります。遺言を適切に確認・把握することで、今後の相続についての全体の方針についての検討がスムーズになります。
相続放棄・限定承認の検討
相続を承認するか放棄するかの判断は、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に行う必要があります(民法915条)。この期間内に遺産の調査を行い、プラスの財産と負債のバランスを見極めることが重要です。
相続放棄:すべての相続を放棄し、財産も負債も受け取らない選択です。
限定承認:相続財産の範囲内で負債を弁済する方法で、相続人全員が行わなければなりません。一見便利な手続きに思えますが、実務上、手続きが煩雑であり、税務上のデメリットも多いため、あまり利用されません。
これらの手続きは、期限を過ぎると「単純承認」とみなされ、すべての財産と負債を相続することになるため注意が必要です。
遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続プロセスです。遺産の全体像を把握し、遺言書の有無を確認した後に行います。開始時期に明確な期限はありませんが、他の手続と併行して進めることが一般的です。
相続税の申告と納付
相続税が発生する場合、その申告・納付は原則的に被相続人の死亡後10か月以内に行う必要があります(相続税法27条)。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が課されるため、事前に税理士などの専門家に相談しながら進めることが推奨されます。

広島大学法科大学院卒業
2009年 司法書士試験合格