親族から「相続放棄してほしい」と頼まれたら?安易な同意は危険!

遺産分割協議の場で、他の相続人から「実家を自分が引き継ぐから、お前は相続放棄してくれ」「手続きが面倒だから、とりあえず放棄の書類にサインしてほしい」などと、相続放棄を求められることがあります。親しい間柄の親族から強く頼まれると、断りきれずに応じてしまいそうになるかもしれません。
しかし、安易な相続放棄は、あなたが本来得られたはずの正当な権利を全て失う、極めてリスクの高い行為です。この記事では、他の相続人から相続放棄を求められた際に、その言葉の裏にある思惑を理解し、ご自身の権利を守るための正しい判断基準と対処法について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
なぜ「相続放棄してほしい」と頼んでくるのか?相手の思惑
他の相続人があなたに相続放棄を促す背景には、主に以下のような思惑が隠されています。
- 特定の財産(主に不動産)を単独で相続したい:他の相続人に代償金を支払うことなく、実家や事業用の土地などを、自分一人の名義にしたいと考えています。
- 遺産分割協議の手間を省きたい:財産の内容を詳しく説明したり、他の相続人の意見を聞いたりする手間を省き、自分の思い通りに手続きを進めたいと考えています。
どのような理由であれ、その要求は、要求している側にとって都合が良いものであるということを、まずは認識しましょう。
安易な同意は禁物!相続放棄の重大な効果
「相続放棄」とは、家庭裁判所で行う、非常に強力な法的手続きです。一度受理されると、原則として撤回はできません。相続放棄をすると、あなたは法律上、初めから相続人ではなかったことになります。これは、具体的に以下の権利と義務を全て失うことを意味します。
- 不動産や預貯金など、プラスの財産を相続する権利
- 借金や保証債務など、マイナスの財産を引き継ぐ義務
- 遺留分など、相続人として主張できる全ての権利
「実家だけを放棄する」といった選択はできず、全ての財産に対する権利を失うのです。このことの重大さを、安易に考えてはいけません。
「相続放棄」を頼まれたときの4ステップ対処法
では、実際に相続放棄を求められたら、どう対応すればよいのでしょうか。以下の4つのステップで、冷静かつ慎重に対応しましょう。
ステップ1:その場で即答せず、時間をもらう
「分かった」と安易に返事をしたり、その場で書類にサインしたりすることは絶対に避けてください。「大切なことなので、一度持ち帰って専門家に相談しながら検討します」とはっきりと伝え、考える時間をもらいましょう。
なお、相続放棄の期間は被相続人の死亡を知ってから3か月間であるため、その点についてはご注意ください。
ステップ2:全ての遺産内容の開示を、毅然と要求する
判断の前提として、遺産の全体像を正確に把握することが不可欠です。「判断材料としたいので、プラスの財産もマイナスの財産も全て含んだ、財産目録を提示してください」と、毅然と要求しましょう。もし相手が開示を渋るようであれば、何か隠している可能性も疑われます。
ステップ3:遺産の総額を把握し、自分の利益を考える
開示された情報に基づき、遺産全体の価値と、ご自身の法定相続分がどのくらいになるのかを冷静に計算します。その上で、相続放棄をすることが、ご自身の利益になるのか、それとも不利益になるのかを客観的に判断します。
ステップ4:「代償分割」など、他の公平な方法を提案する
相手の目的が「実家を残したい」ということであれば、「相続放棄」以外の方法もあります。「あなたが実家を相続する代わりに、私には法定相続分に相当する現金を支払ってください(代償分割)」といった、他の相続人にとっても公平な解決策を提案し、交渉のテーブルに着きましょう。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
- ①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
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親族から「相続放棄してほしい」という言葉が出たとき、それは、その相続が円満には進まない可能性を示唆する、重要なサインです。親族間の力関係や感情的なプレッシャーに屈して、あなたの正当な権利を不当に手放す必要は全くありません。そのような要求をされたら、署名・押印する前に、必ず私たち専門家にご相談ください。あなたの代理人として、相手方と対等に交渉し、あなたの権利を守ります。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員