空き家相続後、固定資産税が6倍に?「特定空き家」のリスクと対策

親が住んでいた実家を相続したものの、ご自身は別の場所に住んでいるため、家が「空き家」になってしまった。利用する予定はないけれど、とりあえず維持費として固定資産税だけは払い続けている。そんな方は非常に多いのではないでしょうか。しかし、その固定資産税が、ある日突然、今までの6倍もの金額になる可能性があることをご存知ですか。
これは、空き家問題に特有の、非常に大きな税金リスクです。この仕組みを知らずにいると、思わぬ高額な納税に苦しむことになりかねません。この記事では、空き家を相続した際に固定資産税が急増するケースと、そのリスクを回避するための具体的な対策について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
固定資産税を安くする「住宅用地の特例」とは?
まず、なぜ固定資産税が急増するのか、その仕組みからご説明します。土地の固定資産税には、「住宅用地の特例」という、非常に大きな軽減措置があります。これは、土地の上に住宅が建っている場合、その土地の課税標準額(税額計算の基礎となる価格)が、以下のように大幅に減額される制度です。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):課税標準額が1/6になる
- 一般住宅用地(200㎡超の部分):課税標準額が1/3になる
つまり、住宅が建っているだけで、更地に比べて土地の固定資産税は最大で1/6にまで安くなっているのです。普段私たちが支払っている固定資産税は、この特例が適用された後の、割引後の金額なのです。
要注意!固定資産税が急増する2つのケース
問題は、この強力な「住宅用地の特例」が適用されなくなってしまうケースがあることです。そうなると、税額は一気に跳ね上がります。
ケース1:空き家を解体して「更地」にした場合
最もよくある失敗例です。「古い家は危険だから、とりあえず解体して更地にしておこう」と安易に考えてしまうと、翌年からこの特例の対象外となります。その結果、土地の課税標準額が6倍になり、固定資産税も最大で6倍にまで急増してしまうのです。建物の固定資産税はなくなりますが、通常、土地の税金の増額分の方が遥かに大きくなります。
ケース2:自治体から「特定空き家」として勧告を受けた場合
空き家を放置し、管理が不十分な状態が続くと、倒壊の危険性や、衛生上の問題、景観の悪化などを理由に、自治体から「特定空き家」に指定されることがあります。そして、自治体からの改善の「勧告」に従わない場合、たとえ家が建っていても、住宅用地の特例から除外され、固定資産税が更地同様に跳ね上がります。
税金の急増を避けるための3つの対策
このような「固定資産税の爆弾」を避けるためには、計画的な対策が必要です。
対策1:適切な管理を継続し、「特定空き家」指定を避ける
空き家を所有し続けるのであれば、定期的に訪問して通風や清掃を行ったり、庭の草木の手入れをしたりと、近隣に迷惑をかけないよう、最低限の管理を続けることが不可欠です。
対策2:安易に解体せず、「古家付き土地」として売却を検討する
もし、ご自身で利用する予定がないのであれば、最も現実的な解決策は「売却」です。その際、解体せずに、あえて古い家が建ったままの「古家付き土地」として売却することで、買主が見つかるまでの間の固定資産税の急増を防ぐことができます。
対策3:相続放棄を検討する
そもそも、その不動産に資産価値がほとんどなく、管理の手間や税金の負担だけが大きい「負動産」である場合は、相続が開始した時点(3ヶ月以内)で「相続放棄」をすることも重要な選択肢です。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
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空き家の相続問題は、単なる遺産分割だけでなく、固定資産税や管理責任といった、所有し続ける限り続く問題が絡み合う、非常に複雑な分野です。放置することが、最もリスクの高い選択となります。私たちにご相談いただければ、法務・税務・不動産実務の専門家が連携し、あなたの状況にとって最も負担の少ない、最適な解決策(売却、相続放棄、管理方法の提案など)をワンストップでご提案します。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員