相続財産目録の作り方。記載すべき項目と、トラブルを防ぐ注意点

相続が開始したら、遺産分割協議や相続税申告、相続放棄の判断など、様々な手続きを進める必要があります。しかし、その全ての大前提として、まず行わなければならないのが、「亡くなった方が、どのような財産を、どれだけ遺したのか」を正確に調査し、一覧表にまとめる作業です。この一覧表のことを「相続財産目録」と呼びます。
財産目録の作成は、円満な遺産分割の基礎となる、極めて重要な作業です。もし、この目録の内容が不正確であったり、一部の財産が隠されていたりすると、相続人間の不信感を生み、深刻なトラブルに発展しかねません。この記事では、相続財産目録の具体的な作り方と、作成時に必ず守るべき注意点について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
遺産分割の第一歩「財産目録」とは?なぜ必要なのか
相続財産目録とは、亡くなった方(被相続人)が死亡した時点で所有していた、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)の全てを、種類ごとに整理して一覧にしたリストです。法律で定められた書式はありませんが、後の手続きのために、正確かつ網羅的に作成する必要があります。
財産目録は、主に以下の3つの目的で、不可欠な書類となります。
- 遺産分割協議の土台:相続人全員が、分割対象となる財産の全体像を正確に共有し、公平な話し合いを行うための基礎資料となります。
- 相続税申告の要否判断:資産の総額が、相続税の基礎控除額を超えるかどうかを判断し、申告が必要かどうかを見極めるために必要です。
- 相続放棄の判断材料:資産よりも負債の方が多い場合に、相続放棄をすべきかどうかを判断するための重要な根拠となります。
財産目録の具体的な作り方と記載項目
財産目録は、大きく「資産の部」と「負債の部」に分けて作成します。以下に、それぞれの部に記載すべき代表的な項目と、記載内容のポイントをまとめました。
① プラスの財産(資産)
財産の種類 | 記載すべき内容の例 |
---|---|
不動産 | 【土地】所在、地番、地目、地積(㎡) 【建物】所在、家屋番号、種類、構造、床面積(㎡) (登記事項証明書や固定資産税評価証明書を基に正確に記載) |
預貯金 | 金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、死亡日時点の残高 |
有価証券 | 証券会社名、株式の銘柄・株数、投資信託の銘柄・口数、死亡日時点の評価額 |
自動車 | 車種、年式、登録番号(ナンバー)、査定額 |
生命保険金 | 保険会社名、証券番号、死亡保険金額、受取人 (受取人固有の財産ですが、相続税計算のため記載) |
② マイナスの財産(負債)
財産の種類 | 記載すべき内容の例 |
---|---|
借入金 | 借入先(金融機関名など)、契約内容、死亡日時点の残高 |
未払金 | 未払いの税金(固定資産税など)、医療費、家賃、公共料金などの内容と金額 |
連帯保証債務 | 主債務者、債権者、保証している債務の内容と残額 |
作成時に必ず守るべき3つの注意点
注意点1:全ての財産を正直に記載する
自分に有利な分割にするため、意図的に一部の財産を隠して財産目録を作成することは、絶対にやめてください。後から財産隠しが発覚すれば、他の相続人との信頼関係は崩壊し、遺産分割協議は無効、最悪の場合は詐欺として訴えられる可能性すらあります。
注意点2:財産の評価方法を明確にする
不動産や非上場株式など、評価額が一つに定まらない財産については、「どの評価方法(例:固定資産税評価額、路線価、不動産会社の査定額など)に基づいた金額なのか」を明記しておくことが、後のトラブルを防ぐ上で重要です。
注意点3:根拠となる資料を添付する
作成した財産目録には、預金の残高証明書、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書など、記載内容の根拠となる資料のコピーを添付しましょう。これにより、目録の客観性と信頼性が格段に高まります。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
- ①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。 - ②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
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>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員