相続人調査で判明した「前妻の子」。遺産分割協議の進め方と注意点

亡くなった夫(父)の相続手続きを進めるため、戸籍謄本を遡って取得したところ、そこには全く知らない人物の名前が。「前妻との間に子供がいたらしい…」。これまで平穏だった家族にとって、会ったこともない相続人の出現は、大きな衝撃と不安をもたらします。
「この人にも遺産を分けなければならないのか」「どうやって連絡を取ればいいのか」「話がこじれて、トラブルになるのではないか」。こうした悩みを抱えるのは当然のことです。この記事では、相続人調査で前妻の子の存在が判明した場合の法的なルールと、トラブルを避けて遺産分割協議を円滑に進めるための正しい付き合い方について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
前妻の子も「同じ相続分」を持つ法定相続人
まず、感情は一旦横に置いて、法律上の大原則を理解する必要があります。それは、亡くなった方の法律上の子供であれば、前妻の子であっても、後妻(現在の配偶者)の子であっても、その相続権に一切の区別はないということです。
たとえ、何十年も会っていなくても、存在すら知らなかったとしても、法定相続分は、後妻の子と全く同じ割合です。例えば、相続人が後妻、後妻の子1人、前妻の子1人の合計3人だった場合、それぞれの法定相続分は以下のようになります。
- 後妻:1/2
- 後妻の子:1/4
- 前妻の子:1/4
そして、最も重要なことは、前妻の子を除外して行った遺産分割協議は、法的に「無効」となることです。必ず、相続人全員で協議を行わなければなりません。
どう付き合う?最初の一歩から協議成立までの正しい進め方
未知の相続人との接触は、非常にデリケートな問題です。感情的な対立を避け、円滑に手続きを進めるためには、以下のステップを冷静に踏むことが重要です。
ステップ1:まずは相続人である事実を冷静に受け入れる
驚きや戸惑いは当然ですが、まずは「前妻の子も、自分たちと同じ権利を持つ正当な相続人である」という法的な事実を、冷静に受け入れましょう。この事実を無視したり、軽んじたりする態度は、相手の感情を逆撫でし、無用な紛争を招く原因となります。
ステップ2:丁寧かつ正式に連絡を取る
最初のアプローチは、極めて重要です。突然、電話や手紙で「あなたが相続人であることが分かりました」と連絡をすれば、相手も驚き、警戒してしまうでしょう。このような場合、専門家である弁護士を代理人として、正式な書面で連絡を取るのが最も安全な方法といえるかもしれません。
弁護士からの手紙であれば、相手方も事態を客観的に理解しやすく、感情的な反発を抑える効果が期待できます。また、あなたがこの問題を法的に、かつ、真摯に対応しようとしている姿勢を示すことにも繋がります。
ステップ3:全ての財産を開示し、誠実に協議に臨む
連絡が取れたら、遺産分割協議を開始します。その際、こちらが把握している全ての遺産(プラスの財産もマイナスの財産も)を、正直に開示することが、信頼関係を築く上で不可欠です。財産を隠したり、過小に評価したりすれば、相手は不信感を抱き、協議は一気に難航します。
連絡が取れない・協議が難航する場合の法的対抗策
丁寧に対応しても、相手の協力が得られない場合もあります。その際は、法的な手続きに移行します。
- 相手の所在が不明な場合:家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、その管理人に協議に参加してもらう必要があります。
- 相手が協議を拒否する場合:家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。調停では、中立な調停委員が間に入り、話し合いを進めてくれます。
- 相手が弁護士を立ててきた場合:こちらも必ず弁護士を立て、対等な立場で交渉に臨む必要があります。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
- ①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。 - ②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
相続問題、特に不動産や多額の財産が関わるケースでは、税務の視点が欠かせません。当事務所横須賀支店には、税理士・司法書士有資格の弁護士が在籍しています。法務と税務、登記の全方面から多角的なアドバイスをして最善の解決を目指します。 - ③グループ内で連携したワンストップサービス
当事務所は、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者がグループ内に存在するため、各専門家と緊密に連携し、あらゆる手続きをワンストップでサポートすることが可能です。
相続にお困りの方は虎ノ門法律経済事務所にご相談ください。
会ったこともない相続人との遺産分割協議は、法的な知識だけでなく、高度な交渉術と、デリケートな感情への配慮が求められる、極めて難しい手続きです。問題をこじらせ、長期的な紛争に発展させてしまう前に、まずは私たち専門家にご相談ください。あなたの代理人として、相手方との円滑なコミュニケーションを図り、穏便かつ法的に正当な解決へと導きます。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員