相続した不動産が「事故物件」。売却・賃貸時の告知義務と対処法

被相続人(亡くなった方)が亡くなり実家を相続したものの、その家で被相続人が孤独死や自死をしていた。このような、過去に死亡事故などがあった不動産は、一般的に「事故物件」と呼ばれます。相続人にとっては、故人を偲ぶ悲しみに加え、この先この家をどうすれば良いのかという、重い課題がのしかかります。
事故物件は、売却や賃貸に出す際に特別な配慮が求められ、その資産価値も大きく下落します。この記事では、事故物件を相続してしまった場合の法的な「告知義務」と、その後の具体的な対処法について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
事故物件とは?法的な「心理的瑕疵」と「告知義務」
事故物件であることは、法律上「心理的瑕疵(しんりてきかし)」がある状態と評価されます。これは、物件そのものに物理的な欠陥はないものの、過去の出来事によって、住む人が心理的な抵抗を感じるような欠点がある、という意味です。具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 建物内での自殺や殺人
- 長期間発見されなかった孤独死
- 火災などの事故による死亡
そして、このような心理的瑕疵がある物件を売却・賃貸する際には、所有者(相続人)は、買主や借主に対して、その事実を契約前に伝えなければならない「告知義務」を負います。もし、この告知義務を怠り、後から事実が発覚した場合、契約の解除や、多額の損害賠償を請求される可能性があります。
相続した事故物件、5つの対処法を比較検討
事故物件を相続した場合、その後の対応として、主に以下の5つの選択肢が考えられます。
① 割引価格での「売却」を目指す
最も一般的な選択肢です。ただし、事故物件であることにより、周辺の相場価格から数割程度、価格を下げないと買い手がつかないのが現実です。事故物件を専門に扱う不動産会社や、価格の安さを重視する投資家などが、主な買い手候補となります。
② 低めの家賃で「賃貸」に出す
売却ではなく、賃貸として活用する方法です。この場合も、家賃を相場より大幅に安く設定する必要があります。告知義務は、事故後最初の入居者に対しては必須です。その入居者が一度住むことで、心理的瑕疵が薄れるという考え方もありますが、後のトラブルを避けるためには、弁護士などの専門家に相談しながら慎重に進めるべきです。
③ 建物を「解体」し、更地として売却する
心理的瑕疵が建物に起因する場合、その建物自体を取り壊し、更地として売却する方法です。土地には心理的瑕疵はないとされるため、相場に近い価格で売却できる可能性があります。しかし、高額な解体費用がかかる上、建物を解体すると、土地の固定資産税が最大で6倍に跳ね上がるという、極めて大きなデメリットがあるため、慎重な計画が必要です。
④ ご自身で「居住」する
もし、相続人が心理的な抵抗を感じないのであれば、ご自身で居住したり、セカンドハウスとして利用したりすることも選択肢の一つです。
⑤ 負担が大きい場合は「相続放棄」する
資産価値の大幅な下落や、管理の負担、精神的な苦痛などを考慮し、事故物件を所有し続けることが大きな負担となる場合は、相続開始から3ヶ月以内に、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをとることも、重要な選択肢です。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
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>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員