株式・投資信託の相続手続き。価格変動リスクと5つのステップ

亡くなった親の遺品から、証券会社の取引報告書が見つかった。株式や投資信託を保有していたようだ。預貯金や不動産と違い、株式などの有価証券は日々価格が変動します。「どの時点の価格で遺産分割をすれば良いのか」「手続きはどう進めればいいのか」など、特有の疑問や注意点が多く、戸惑う方も少なくありません。
特に、相続人同士で分け方を話し合っている間に株価が大きく変動し、不公平感から新たなトラブルに発展するケースもあります。この記事では、株式や投資信託を相続する際の具体的な手続きの流れと、価格変動リスクへの対処法など、必ず知っておくべき注意点について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
預貯金と違う、株式相続の最大の特徴「価格変動リスク」
株式や投資信託の相続が、預貯金の相続と根本的に違うのは、その価値(評価額)が常に変動している点です。相続開始時(死亡日)、遺産分割協議時、そして実際に名義変更を行う時で、その価値は全て異なります。
この価格変動は、相続人間の不公平感を生む最大の原因となります。例えば、遺産分割協議では100万円の価値だった株式が、名義変更後には80万円に値下がりしてしまう、ということもあり得るのです。
こうしたトラブルを防ぐため、遺産分割協議では、「どの時点の価格を基準にして分割内容を決めるか」という「評価基準日」を、相続人全員で合意しておくことが極めて重要になります。実務上は「遺産分割協議の成立日前後を基準とすることが多いといえます。
株式・投資信託の相続手続き|5つのステップ
有価証券の相続手続きは、証券会社を通じて行います。大まかな流れは以下の通りです。
ステップ1:証券会社を特定し、残高証明書を取得する
まずは、故人の取引報告書などを手掛かりに、どの証券会社に口座を持っていたかを特定します。特定できたら、その証券会社に連絡し、相続が発生した旨を伝えます。口座は直ちに凍結され、取引ができなくなります。同時に、死亡日時点での「残高証明書」の発行を依頼します。これが、相続財産を確定させるための基本資料となります。
ステップ2:遺産分割協議で、分け方を決定する
残高証明書を基に、相続人全員で、どの銘柄を、誰が、どのくらい相続するのかを話し合い、その合意内容を「遺産分割協議書」にまとめます。
ステップ3:証券会社に必要書類を提出する
銀行預金の場合と同様に、証券会社所定の相続手続依頼書と共に、戸籍謄本一式や、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書などを提出します。
ステップ4:相続人名義の証券口座を開設する
株式や投資信託は、原則として現金ではなく、そのままの形で相続人が引き継ぎます。そのため、株式等を受け取る相続人は、ご自身名義の証券口座を持っている必要があります。もし持っていなければ、新たに開設しなければなりません。手続きをスムーズに進めるため、故人と同じ証券会社で口座を開設するのが一般的です。
ステップ5:相続人の口座に株式等が移管される
書類審査(1ヶ月程度)が終わると、故人の口座から、各相続人が指定したご自身の証券口座へ、株式や投資信託が移管(振替)され、手続きは完了です。
特に注意が必要な「非上場株式」の相続
亡くなった方が、ご自身で会社を経営していた場合など、証券取引所に上場していない「非上場株式」を遺産として遺すことがあります。非上場株式には、市場価格という客観的な株価が存在しません。そのため、その価値をいくらと評価するのか、という点で、相続人間で深刻な対立が生じやすい、非常に難しい財産です。評価額の算定には、税理士などの専門家による、専門的な株価評価が必要不可欠となります。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
- ①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。 - ②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
相続問題、特に不動産や多額の財産が関わるケースでは、税務の視点が欠かせません。当事務所横須賀支店には、税理士・司法書士有資格の弁護士が在籍しています。法務と税務、登記の全方面から多角的なアドバイスをして最善の解決を目指します。 - ③グループ内で連携したワンストップサービス
当事務所は、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者がグループ内に存在するため、各専門家と緊密に連携し、あらゆる手続きをワンストップでサポートすることが可能です。
相続にお困りの方は虎ノ門法律経済事務所にご相談ください。
株式や投資信託の相続は、価格変動という不確定要素が絡むため、相続人間での合意形成が特に重要となります。どのタイミングの価格で分けるのか、誰がどの銘柄を引き継ぐのか。そうしたデリケートな問題を円滑に進めるためには、専門家である弁護士が間に入り、法的に公平な解決案を提示することが有効です。特に、非上場株式が絡む場合は、専門家のサポートが不可欠です。まずはお気軽にご相談ください。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員