「亡くなった父が遺した事業の借金について、私が連帯保証人になっています。父には多額の負債があるので相続放棄を考えていますが、そうすれば、この保証人としての返済義務もすべて消えるのでしょうか?」
これは、相続に関するご相談の中でも、特に深刻で、誤解が生じやすい問題の一つです。
故人に多額の借金があれば、相続放棄を検討するのは当然です。しかし、ご自身がその借金の「保証人」や「連帯保証人」になっている場合、話は全く変わってきます。
この記事では、「相続人としての返済義務」と「保証人としての返済義務」という2つの異なる責任を整理し、相続放棄が保証人としての責任にどう影響するのか、そして、この困難な状況にどう立ち向かうべきかを税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
【結論】相続放棄をしても「保証人としての返済義務」は消えない
まず、最も重要な結論から、率直にお伝えしなければなりません。
残念ながら、答えはNOです。あなたが故人の借金の保証人(または連帯保証人)である場合、相続放棄をしても、あなた自身の「保証人としての返済義務」が消えることは一切ありません。
「借金を相続しないために放棄したのに、なぜ返済義務が残るのか?」と、納得がいかない方も多いでしょう。その理由は、あなたの持つ「2つの立場」を区別して考える必要があるからです。
なぜ消えない?「相続人としての立場」と「保証人としての立場」は別物
相続放棄をしても保証人としての返済義務が残ってしまうのは、法律上、あなたの立場が以下の2つに分けられるためです。
① 相続人としての返済義務
これは、故人(主たる債務者)の借金を、相続によって承継する義務のことです。
相続とは、亡くなった方の権利や義務を包括的に引き継ぐことなので、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぎます。
この「相続人としての返済義務」は、相続放棄をすることによって完全に消滅させることができます。
② 保証人としての返済義務
これは、相続とは全く関係なく、あなた自身が債権者(銀行など)と直接交わした「保証契約」に基づいて発生する義務です。
保証契約は、「主たる債務者(故人)が返済できなくなった場合は、私が代わりに返済します」と、あなたが自分の意思で債権者と約束したものです。これは、あくまであなた個人の契約であり、故人の財産とは切り離されています。
したがって、相続放棄をしても、この保証契約そのものが無効になるわけではないのです。
つまり、相続放棄で消せるのは①の義務だけであり、②のあなた自身の契約に基づく義務はそのまま残ってしまう、ということです。
保証人である相続人が取るべき3つの対処法
ご自身の保証人としての返済義務が消えないと分かり、途方に暮れてしまうかもしれません。しかし、打つ手がないわけではありません。取るべき対処法を検討しましょう。
- 債権者と交渉する
まずは、債権者(銀行など)に連絡を取り、主債務者が亡くなったこと、ご自身の状況などを誠実に説明し、今後の返済計画について交渉することが考えられます。分割での支払いや、利息の減免などに応じてもらえる可能性もあります。弁護士が代理人として交渉することも有効な手段です。
>>他の弁護士から手紙が届いた - 他の相続人と連携して遺産から返済する
もし、故人に借金以上のプラスの財産(不動産や預貯金など)が残されている場合は、他の相続人と協力し、その遺産から借金を返済してもらうことで、保証人としてのあなたの負担をなくしたり、減らしたりすることができます。そのためにも、まずは遺産の全体像を正確に把握することが重要です。
>>遺産の内容を調査して欲しい - 自身の債務整理を検討する
借金の額が大きく、到底返済が不可能な場合は、最終手段として、あなた自身の「債務整理」を検討する必要があります。自己破産や個人再生といった法的手続きを取ることで、保証債務を含めたご自身の借金を整理することが可能です。これはあなたの人生を再スタートさせるための重要な選択肢であり、弁護士への相談が不可欠です。
まとめ:一人で抱え込まず、すぐに専門家へご相談を
故人の借金の保証人になっている場合、相続放棄をしても保証人としての返済義務からは逃れられない、という厳しい現実をご理解いただけたかと思います。
その理由は、「相続人としての地位」と「保証人としての地位」が、法律上まったくの別物だからです。
この問題は、相続問題と借金問題が複雑に絡み合う、非常にデリケートで専門的な分野です。ご自身の状況を正確に把握し、最善の解決策を見つけるためには、専門家のアドバイスが欠かせません。一人で抱え込まず、できるだけ早く、相続と債務整理の両方に精通した弁護士にご相談ください。
当事務所は、皆様の複雑な相続問題を解決するために、他にはない強みを持っています。
①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。
②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
相続問題、特に不動産や多額の財産が関わるケースでは、税務の視点が欠かせません。当事務所横須賀支店には、税理士・司法書士有資格の弁護士が在籍しています。法務と税務、登記の全方面から多角的なアドバイスをして最善の解決を目指します。
③グループ内で連携したワンストップサービス
当事務所は、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者がグループ内に存在するため、各専門家と緊密に連携し、あらゆる手続きをワンストップでサポートすることが可能です。
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