推定相続人の廃除を申し立てるべき「著しい非行」とは?認められる具体例

「長年にわたり暴力を振るう子供に、財産を渡したくない」「多額の借金の肩代わりをさせた上、反省の色もない息子を、相続人から外したい」。このように、特定の相続人の非行に長年苦しめられ、ご自身の財産をその人に相続させたくないと強く願う方は少なくありません。
遺言書で「〇〇には相続させない」と書くだけでは、最低限の取り分である「遺留分」を奪うことはできません。遺留分も含めて相続権を完全に剥奪するための法的な手続きが「推定相続人の廃除」です。しかし、この手続きは非常に厳格で、認められるためには法律で定められた厳しい要件を満たす必要があります。この記事では、相続廃除が認められるための重要な要件である「著しい非行」とは具体的にどのような行為を指すのか、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
推定相続人の廃除とは?遺留分を奪う強力な手続き
推定相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、親)が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行を行った場合に、被相続人の意思に基づいて、その相続人の相続権を家庭裁判所の審判によって奪う制度です。
遺言では奪うことのできない遺留分も含めて、相続権を完全に失わせるという、非常に強力な効果を持ちます。そのため、裁判所もその判断は極めて慎重に行います。
廃除が認められる理由|「著しい非行」の具体例
相続廃除が認められるのは、民法892条に定められた以下の3つの場合に限られます。
- 被相続人に対して虐待をしたとき
- 被相続人に対して重大な侮辱を加えたとき
- その他の著しい非行があったとき
特に問題となるのが、3つ目の「著しい非行」です。これは、虐待や侮辱には当たらなくとも、親子関係・夫婦関係という信頼関係を根本から破壊するような、客観的に見て極めてひどい行為を指します。過去の裁判例から、具体的にどのような行為が「著しい非行」と判断されやすいかを見ていきましょう。
「著しい非行」と認められやすいケース
- 多額の借金の肩代わりをさせた上、反省なく浪費を続ける
- 親の財産を勝手に持ち出し、ギャンブルなどで使い込む
- 重大な犯罪行為を犯し、家族に著しい精神的苦痛と社会的制裁を与えた
- 長期間にわたり家出や失踪を繰り返し、全く連絡も取ろうとしない
- 配偶者がいるにもかかわらず、愛人を作り、家庭を顧みないばかりか、暴言や嫌がらせを繰り返す
「著しい非行」とは認められにくいケース
- 単に「性格が合わない」「親子仲が悪い」
- 親の意に沿わない相手と結婚した
- 時々、口論で暴言を吐くことがある
- 事業に失敗して、親に迷惑をかけた(ただし、反省している場合)
このように、単なる親子喧嘩のレベルを超え、信頼関係を回復するのが不可能と言えるほどの、客観的で重大な行為がなければ、「著しい非行」とは認められません。
推定相続人廃除の手続きと、不可欠な「証拠」
相続廃除の手続きは、被相続人が生前に行う「生前廃除」と、遺言によって行い、死後に遺言執行者が手続きをする「遺言廃除」の2種類があります。
いずれの場合も、家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、虐待や非行の事実を裏付ける客観的な証拠が絶対に不可欠です。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 暴力による怪我の写真や診断書
- 脅迫や暴言を録音した音声データ
- 借金の督促状や、肩代わりした際の振込記録
- 非行を裏付ける第三者の陳述書や、警察への相談記録
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
- ①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。 - ②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
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当事務所は、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者がグループ内に存在するため、各専門家と緊密に連携し、あらゆる手続きをワンストップでサポートすることが可能です。
相続にお困りの方は虎ノ門法律経済事務所にご相談ください。
推定相続人の廃除は、相続に関する手続きの中でも特にハードルが高いものです。認められるためには、感情的な訴えだけでなく、法律の要件を正確に理解し、十分な証拠に基づいて主張を組み立てる必要があります。ご自身のケースで廃除が認められる可能性があるか、また、そのためにどのような証拠が必要か、まずは一度、私たち専門家にご相談ください。あなたの長年の苦しみに、法的な解決の道筋を示します。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員