孫への生前贈与は特別受益になる?相続人間の公平を保つための法知識

遺産分割協議の際、他の相続人から「亡くなった親は、お前の子供(被相続人から見て孫)に、大学の学費や結婚資金を援助していたじゃないか。それは実質的にお前への贈与(特別受益)だから、その分、お前の相続分は減らすべきだ」と主張され、困惑していませんか。
相続人ではない「孫」への生前贈与は、相続財産の前渡しである「特別受益」にあたるのでしょうか。この問題は、相続人間の公平をどう考えるかという、非常にデリケートで専門的な判断が求められる分野です。この記事では、孫への贈与が特別受益とみなされるかどうかの法的な判断基準について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
原則:相続人ではない「孫」への贈与は特別受益にならない
まず、法律上の大原則からご説明します。特別受益とは、共同相続人間の公平を図るための制度です。そのため、特別受益の対象となる贈与は、原則として「相続人」に対して行われたものに限られます。
通常の相続(親が亡くなり、その子供たちが相続人となるケース)において、孫は相続人ではありません。したがって、被相続人が、相続人ではない孫に対して行った生前贈与は、原則として特別受益にはあたらない、ということになります。これが基本的な考え方です。
【最重要】例外的に特別受益とみなされるケース
しかし、上記の原則を形式的に貫くと、かえって相続人間で著しい不公平が生じる場合があります。例えば、相続人である長男が、親に「私に贈与すると特別受益になるから、代わりに私の息子(孫)に贈与してくれ」と頼んで、実質的に贈与の利益を受けるようなケースです。
このような不公平を是正するため、判例は、たとえ孫への贈与であっても、「その贈与が、実質的にその親である相続人への贈与と同一視できるような場合」には、例外的にその親の特別受益とみなす、という判断基準を示しています。
どのような場合に「相続人への贈与と同一視」されるのか?
裁判所は、個別の事案ごとに、以下の要素などを総合的に考慮して判断します。
- 贈与の経緯:相続人である親が、被相続人に贈与を依頼したか
- 贈与された金銭の使途:孫の学費や生活費など、本来その親が扶養義務として負担すべきものを、祖父母が肩代わりしたような場合
- 相続人である親が受けた利益:贈与によって、相続人である親が実質的にどの程度の経済的利益を受けたか
例えば、親の資力では到底支払えないような、孫の私立医学部の学費を祖父が支払ったようなケースは、実質的にその親への贈与(特別受益)と判断される可能性が高まります。
孫が「代襲相続人」となっている場合はどうなる?
話が少し複雑になりますが、もし孫の親(被相続人の子)が既に亡くなっており、孫が「代襲相続人」として直接相続人になっている場合は、話が別です。
この場合、孫は正真正銘の「相続人」です。したがって、代襲相続人である孫が、被相続人から直接受けた生前贈与は、他の相続人への贈与と同様に、原則として特別受益の対象となります。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
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孫への贈与が特別受益にあたるか否かの判断は、「実質的に相続人への贈与と同一視できるか」という、非常に専門的で、個別具体的な事情に大きく左右される問題です。感情的な水掛け論に陥る前に、まずは私たち専門家にご相談ください。過去の裁判例や法律の趣旨に照らし、あなたのケースで特別受益の主張が認められる可能性があるのか、的確な見通しをお伝えし、その主張を裏付けるための証拠収集からサポートいたします。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員