亡くなった方の銀行口座凍結を解除する具体的ステップと必要書類

ご家族が亡くなると、その方が所有していた銀行の預金口座は、金融機関によって「凍結」され、入出金や引き落としが一切できなくなります。葬儀費用や当面の生活費を引き出したい、あるいは遺産分割のために預金を解約したいと思っても、この凍結を解除しない限り、何も進めることができません。
口座凍結の解除は、相続手続きの中でも最も基本的かつ重要な作業の一つです。この記事では、亡くなった方の銀行口座の凍結を解除し、預金の払戻しを受けるための具体的な手順と、金融機関から求められる必要書類について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
なぜ口座は凍結されるのか?その目的と影響
金融機関が口座を凍結する最大の理由は、相続財産を保全し、相続人間のトラブルを防ぐためです。もし、相続人の一人が勝手に預金を引き出して使い込んでしまえば、他の相続人の権利が侵害され、深刻な紛争に発展しかねません。それを防ぐため、金融機関は、相続人全員の合意が確認できるまで、口座を凍結して財産を保護するのです。
口座凍結の解除(払戻し)までの8つの具体的ステップ
口座凍結の解除手続きは、相続人全員の協力のもと、段階的に進めていく必要があります。
ステップ1:全ての通帳・カード類を探す
まずは、故人の遺品の中から、預金通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物などを全て探し出し、どの金融機関に口座があるのかを把握します。
ステップ2:取引銀行の支店へ連絡し、手続きを申し出る
口座がある金融機関の窓口へ連絡し、口座名義人が死亡したことを伝えます。この時点で口座が凍結され、相続手続きが開始されます。金融機関から、所定の「相続手続依頼書」などの書類一式を受け取ります。
ステップ3:故人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集する
手続きの中で最も手間のかかる作業です。法務局や市区町村役場で、故人の「出生から死亡まで」の全ての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得します。これは、法律上の相続人が誰であるかを確定させるために、絶対に不可欠な書類です。
ステップ4:相続人全員の現在の戸籍謄本を取得する
ステップ3で確定した、相続人全員の現在の戸籍謄本も必要となります。こちらは、各相続人が現在生存しているかを確認するために必要となります。
ステップ5:遺産の分け方を確定し、証明書類を準備する
誰が預金を相続するのかを証明する書類を準備します。主に以下の二つのパターンがあります。以下の書類が存在しない場合は、法定相続分の割合で各相続人が支払を受けることができる可能性もありますので、各金融機関にお問い合わせください。
- 遺言書がある場合:故人が遺した遺言書を準備します。自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。
- 遺言書がない場合:相続人全員で遺産分割協議を行い、合意内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。
ステップ6:相続人全員の印鑑証明書を用意する
遺産分割協議書や、金融機関所定の書類には、相続人全員の実印での押印と、「印鑑証明書」の添付が求められます。
ステップ7:全ての書類を金融機関に提出する
収集・作成した全ての書類に署名・押印し、金融機関の窓口に提出します。
ステップ8:払戻しの実行
金融機関での書類審査(2週間~1ヶ月程度)を経て、問題がなければ、指定した代表相続人の口座に、預金が全額振り込まれます。これで凍結解除の手続きは完了です。
豆知識:葬儀費用などに使える「預貯金の仮払い制度」
遺産分割協議が長引きそうな場合でも、葬儀費用や当面の生活費の支払いに困らないよう、2019年の法改正で「預貯金の仮払い制度」が創設されました。これは、各相続人が、家庭裁判所の判断を経ずに、一定額まで故人の預金を引き出せる制度です。上限額は「(相続開始時の預金額)× 1/3 ×(その相続人の法定相続分)」で、かつ、一つの金融機関からは150万円までと定められています。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
- ①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。 - ②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
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当事務所は、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者がグループ内に存在するため、各専門家と緊密に連携し、あらゆる手続きをワンストップでサポートすることが可能です。
相続にお困りの方は虎ノ門法律経済事務所にご相談ください。
銀行口座の凍結解除は、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成など、非常に手間と時間がかかる作業です。特に、相続人間で対立がある場合は、手続きが全く進まなくなってしまいます。私たち弁護士にご依頼いただければ、これらの煩雑な手続きを全て代行し、相続人間の交渉も代理人として進めることで、一日も早い口座凍結の解除と、円満な遺産分割を実現します。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月12日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員