不動産の評価額で揉めないために。相続で使う4つの評価額と公平な決め方

遺産分割協議において、最も激しい対立の原因となりやすいのが、実家などの「不動産の評価額」をめぐる争いです。「自分がこの家を相続したいから、評価額は低く見積もってほしい」「私は現金で受け取るのだから、時価で高く評価してほしい」。このように、各相続人の利害が真っ向から衝突するため、話し合いが全く進まなくなってしまうのです。
なぜ、不動産の評価額はこれほど揉めるのでしょうか。それは、不動産には一つの絶対的な価格というものがなく、目的によって複数の「評価額」が存在するからです。この記事では、相続で用いられる4種類の評価額の違いと、相続人間の争いを防ぐための、公平な評価額の決め方について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
相続で使う4種類の評価額。それぞれの違いとは?
不動産の評価額には、主に以下の4つがあり、それぞれ目的や基準が異なります。
- 実勢価格(時価):実際に市場で売買される、いわゆる時価。遺産分割協議では、この価格を基準にすることが最も公平とされます。
- 公示地価:国が公表する土地の標準価格。土地取引の目安となります。
- 相続税路線価:相続税や贈与税を計算するために国税庁が定める価格。一般的に、実勢価格の8割程度とされています。
- 固定資産税評価額:固定資産税を計算するために市町村が定める価格。一般的に、実勢価格の7割程度とされています。
この中で、遺産分割協議の基準とすべきは、特定の相続人だけが有利不利にならない、最も公平な「実勢価格(時価)」です。不動産を相続したい相続人が、税金計算用の低い路線価などを基準にすることを主張してきた場合は、安易に同意してはいけません。
公平な評価額を決めるための3つの方法
では、客観的で公平な「実勢価格(時価)」は、どのように決めればよいのでしょうか。
方法1:複数の不動産会社による「査定」
最も一般的で、費用もかからない方法です。複数の(できれば3社以上の)不動産会社に、不動産の売却査定を依頼します。各社から提示された査定額を比較検討し、その平均値や、最も信頼できる査定額を、相続人全員の合意の上で、遺産分割の基準価格とします。
方法2:不動産鑑定士による「鑑定評価」
相続人間での対立が激しく、不動産会社の査定では合意形成が難しい場合や、土地の形状が複雑な場合などは、国家資格者である不動産鑑定士に、正式な「鑑定評価」を依頼します。費用はかかりますが(遺産から支出するのが一般的)、その評価書は非常に信頼性が高く、裁判所もこれを尊重するため、紛争を最終的に解決する上で極めて有効な証拠となります。
方法3:家庭裁判所の調停・審判で決める
当事者同士で評価額の合意がどうしてもできない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停の場では、調停委員が間に入り、上記の方法(不動産鑑定など)を用いて、公平な評価額を定めるための話し合いを進めてくれます。調停でもまとまらなければ、最終的には裁判官が審判で評価額を決定します。
評価方法の合意も「遺産分割協議書」に明記する
評価額について相続人全員の合意ができたら、その合意内容を遺産分割協議書に明確に記載しておくことが重要です。「〇〇の不動産については、〇〇不動産の査定額である金〇〇円を、遺産分割の前提となる評価額とすることで、相続人全員が合意した」というように、どの価格を基準にしたのかを明記することで、後日の紛争蒸し返しを防ぎます。
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店の強み
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不動産の評価額をめぐる争いは、相続トラブルの核心であり、解決には高度な専門知識と交渉力が不可欠です。私たち弁護士にご相談いただければ、公平な評価額の算定方法をご提案し、必要であれば当事務所のグループに所属する不動産鑑定士と連携して、客観的な評価を取得します。そして、その評価を基に、あなたの代理人として、他の相続人との粘り強い交渉を行います。評価額で揉めてしまったら、まずは一度、私たちにご相談ください。
>>無料相談の流れはこちら本記事は、令和7年8月11日時点の法令等に基づき作成しております。法改正などにより、最新の情報と異なる場合がございます。具体的な事案については必ず弁護士にご相談ください。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員