遺言記載の預金が足りない!その原因と解決方法は

「父が遺した遺言書には『預金500万円について長男に4分の3、次男に4分の1を相続させる』と書いてあるのに、口座を確認したら200万円しか預金が残っていなかった…」 「母の生前、頻繁にお金を引き出していた兄が怪しい。これは使い込みではないか?」
故人が遺してくれた遺言書は、相続における故人の最終的な意思表示であり、尊重されるべきものです。しかし、いざその内容を確認した際に、記載されているはずの預金が大幅に減っていたり、なくなっていたりするケースは、残念ながら少なくありません。
このような事態に直面すると、大きなショックと同時に、他の相続人への不信感が募り、深刻なトラブルに発展してしまう可能性があります。
この記事では、「遺言に書かれた預金が足りない」という問題に直面した際に、考えられる原因と、ご自身の正当な権利を守るための対処法について、相続問題に詳しい弁護士が解説します。
遺言の預金が足りない場合に考えられる3つの原因
まず、なぜ遺言書の内容と実際の預金額に相違が生まれるのか、その主な原因を知ることが重要です。
1. 故人自身の正当な費消
最も多いのが、故人がご自身の生活費、医療費、介護費用などのために預金を使っていたケースです。遺言書を作成した時点からお亡くなりになるまでの間に、ご自身の生活のために財産を使うのは当然の権利であり、この場合であっても相続人間の話し合いで分け方を決めることとなります。
遺言問題の解決においては,遺言者の意思解釈が重要となります。
遺言の意思解釈においては、文言を形式的に判断するだけでなく,遺言者の真意を探求し,その真意に沿った内容で遺言をできるだけ有効にするように解釈することが,遺言者の意思に沿うものとされております(最三小判平成 5 年1月19日(民集47巻1号1頁)最二小判昭和58年3月18日(判時1075号115頁))。
本ケースでは、特段の事情が記載されていない限り、「相続開始時に存在する預金を、指定された割合で分ける」のが遺言者の合理的な意思解釈だと考えられます。したがって、残った預金200万円を、長男150万円(200万円×3/4)、次男50万円(200万円×1/4)と分けるのが、遺言の趣旨に沿った解決方法と言えるでしょう。
なお、個別事案の具体的事情により判断は異なりますので、遺言書に別の記載があり違う解釈ができるのであれば結論を異にすることもあり得ます。
2. 他の相続人などによる「使い込み(不正出金)」
最も深刻なのが、特定の相続人や親族が、故人の意思に基づかずに無断で預金を引き出し、自分のために使ってしまった「使い込み」のケースです。特に、故人が高齢で判断能力が低下していたり、特定の親族が財産管理を任されたりしていた場合に起こりやすい問題です。
「もしかしたら不正に引き出されているかもしれない…」 と感じたら、早急な対応が必要です。 詳しくは以下のページもご覧ください。
3. 故人による生前贈与
故人が亡くなる前に、特定の相続人や孫などに、まとまった金額を贈与しているケースです。この生前贈与は、相続人に対する者であれば相続財産の前渡しと見なされる「特別受益」にあたる可能性があります。特別受益がある場合、遺産分割においてその分を考慮して各相続人の取得分を調整する必要があります。
>>特別受益とは?
預金が足りない…まず何をすべきか?対処法のステップ
遺言の預金が足りないことが判明した場合、感情的に他の相続人を問い詰める前に、冷静に以下のステップで対応を進めましょう。
ステップ1:正確な財産調査
まずは、故人の財産の全容を正確に把握することが不可欠です。預金が他の財産に形を変えているだけの可能性もあります。金融機関から亡くなった日までの取引履歴を取り寄せ、不自然な出金がないか、大きな金額の動きはないかなどを確認します。
財産調査は非常に手間がかかり、専門的な知識も必要となります。ご自身での調査が難しい場合は、専門家に依頼することをお勧めします。
ステップ2:話し合い(遺産分割協議)
財産調査の結果、使い込みや多額の生前贈与が疑われる場合は、その事実を基に他の相続人と話し合います。相手が事実を認め、任意に返還(遺産に戻す)すれば、協議によって解決できます。
しかし、多くの場合、相手方は「頼まれて引き出した」「もらったものだ」などと主張し、話し合いは平行線を辿りがちです。
ステップ3:法的手続き(調停・訴訟)
話し合いでの解決が困難な場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるか、地方裁判所に不当利得返還請求訴訟などを提起し、法的な解決を目指すことになります。訴訟では、こちら側の主張を裏付ける客観的な証拠が極めて重要になります。
「遺言の預金が足りない」問題を弁護士に相談するメリット
この問題は、証拠収集の難しさや、親族間の感情的な対立から、当事者だけでの解決は非常に困難です。相続の専門家である弁護士にご相談いただくことで、以下のようなメリットがあります。
- 法的に有効な証拠収集を代行できる
- 相手方との交渉窓口となり、精神的負担を軽減できる
- 調停や訴訟になった場合、代理人として適切な主張・立証活動を行える
- 他の相続財産を含めた、最終的な解決策を提示できる
使い込みによってご自身の取り分が侵害された場合、遺留分を請求できる可能性もあります。まずはご自身の状況を専門家にご相談ください。
相続のことなら虎ノ門法律経済事務所へ
当事務所は、相続に関するあらゆる問題に対応できる体制と、長年の実績がございます。
①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
虎ノ門法律経済事務所は1972年の創立以来、数多くの相続案件を解決に導いてまいりました。約100名の弁護士が所属する組織力と、蓄積された豊富な経験・ノウハウを活かし、使い込みのような複雑な事案でも、粘り強く解決にあたります。
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当事務所の弁護士は、税理士・司法書士の資格も有しております。相続問題は、法律だけでなく、相続税や贈与税といった税務、不動産の名義変更などの法務が複雑に絡み合います。法律・税務・法務の全ての観点から、お客様にとって最善の解決策をご提案できるのが、当事務所の最大の強みです。
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当事務所は、弁護士、税理士、司法書士が所属しており、グループ会社に不動産鑑定士や不動産業者などが所属しています。例えば、「使い込まれた預金が不動産に形を変えていた」というようなケースでも、グループ内で連携し、財産評価から登記手続き、相続税申告まで、一括でサポートするワンストップサービスを提供できます。これにより、お客様が複数の専門家を探す手間と時間を省くことが可能です。
相続にお困りの方は虎ノ門法律経済事務所にご相談ください
遺言に書かれた預金が足りないという問題は、放置すればするほど証拠の収集が難しくなり、解決が困難になります。少しでも「おかしいな」と感じたら、一人で悩まず、まずは私たち専門家にご相談ください。
虎ノ門法律経済事務所横須賀支店では、相続に関する初回相談は無料です。お客様のお話を丁寧にお伺いし、今後の見通しや取るべき対応について、分かりやすくご説明いたします。
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>>相談の流れ

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としている。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員