「生前贈与(おしどり夫婦贈与)」と「相続」、結局どっちが得?弁護士がケース別に徹底比較!

はじめに
神奈川県横須賀市やその近隣で、長年連れ添ったパートナーの将来を考えたとき、「元気なうちに『おしどり夫婦贈与』で自宅の名義を渡しておくべきか」「それとも、自分が亡くなった後に『相続』で引き継いでもらうべきか」と悩んでいらっしゃる方は非常に多いです。
インターネットで検索すると、「贈与税が2,110万円まで非課税!」というメリットもあれば、「相続の方が税金は安い」という情報もあり、一体どちらが自分たちにとって本当に“得”なのか、分からなくなってしまいますよね。
実はこの問題、「どちらが絶対的に得」という唯一の正解はありません。“得”の基準は、税金の安さだけでなく、ご家族の関係性や手続きの手間、そして何よりも「パートナーにどんな形で安心を届けたいか」という想いによって変わるからです。
この記事では、生前贈与と相続の双方に精通した弁護士が、「税金コスト」「トラブル予防」「手続き」という3つの視点から両者を徹底比較し、具体的なケース別にどちらがおすすめかを税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
比較の前に!2つの制度をおさらい
まず、両制度が持つ節税のキーポイントを簡単に確認しておきましょう。
おしどり夫婦贈与(生前贈与)
「贈与税の配偶者控除」:婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産を贈与する場合、最大2,000万円まで贈与税が控除されます。暦年贈与の110万円と合わせて最大2,110万円まで非課税で贈与できます。
相続
「配偶者の税額軽減」:配偶者が相続した遺産が1億6千万円または法定相続分までなら、相続税がかからないという非常に強力な制度です。
「小規模宅地等の特例」:配偶者などが自宅の土地を相続した場合、その土地の評価額を最大80%も減額できる制度です。
これらの武器をどう使うかが、「どっちが得か」を判断する鍵となります。
【徹底比較】2つの視点で「どっちが得か」をジャッジ!
それでは、2つの視点から両者を比較していきます。
比較1:税金コスト(支払う税金の総額)
多くの方が最も気になるのが、税金の総額でしょう。
税金の種類 | おしどり夫婦贈与 | 相続 |
---|---|---|
贈与税/相続税 | ○ 2,110万円まで非課税 | ◎ 1億6千万円等まで非課税 |
不動産取得税 | × 原則課税(3%) | ◎ 非課税 |
登録免許税 | △ 税率2% | ◎ 税率0.4% |
結論 | 諸費用が高い傾向 | 諸費用が安い傾向 |
表の通り、不動産取得税が非課税で、登録免許税も5分の1で済むため、税金コストだけを見れば、多くの場合「相続」の方が安く済む傾向にあります。
特に、おしどり夫婦贈与のメリットである「贈与税の非課税」は、相続の「配偶者の税額軽減」を使えば同等以上の効果が得られることが多いため、税金面での優位性は相続に軍配が上がることが多いのが実情です。
比較2:相続トラブルの予防効果
次に、「争族」を避けるという観点から比較します。
- おしどり夫婦贈与:
生前に所有権が完全にパートナーへ移転するため、将来の遺産分割協議の対象から外れます。「誰が自宅をもらうか」で揉める余地がなく、確実にパートナーへ自宅を残せるという絶大なメリットがあります。 - 相続:
遺言書がない場合、自宅は相続人全員の共有財産となり、遺産分割協議が必要になります。他の相続人(例えばお子様たち)が反対すれば、協議がまとまらず、最悪の場合、裁判に発展するリスクがあります。また、遺言書もいつでも撤回可能であることから、確実性という点では生前贈与に劣ります。
トラブル予防という観点では、「おしどり夫婦贈与」に圧倒的な強みがあります。
【ケース別】あなたに合うのはどっち?具体的なモデルケースで診断
それでは、具体的なケースでどちらがおすすめかを見ていきましょう。
ケース1:「とにかく税金を安くし、円満に引き継ぎたい」Aさん夫婦
状況:夫婦仲、親子仲ともに良好。遺産総額は相続税がかかる見込み。
おすすめ:「相続」
理由と対策:税金コストを最優先するなら「相続」が有利です。ただし、遺産分割協議の手間を省き、意思を明確にするためにも、「妻に自宅不動産を相続させる」旨を明記した公正証書遺言を作成しておくのがベストな組み合わせです。
ケース2:「他の相続人(前妻の子など)と揉めたくない」Bさん夫婦
状況:ご主人に前妻との間の子がおり、現在の奥様との関係はあまり良くない。何よりも今の奥様に自宅を確実に残したい。
おすすめ:「おしどり夫婦贈与」
理由と対策:このケースでは、税金の損得よりもトラブル予防が最優先です。生前に名義を完全に移転させてしまう「おしどり夫婦贈与」が断然おすすめです。ただし、他の相続人の「遺留分」を侵害しないか、事前のシミュレーションは必須です。
ケース3:「遺産は自宅くらいで、相続税の心配はない」Cさん夫婦
状況:主な財産は現在住んでいる自宅のみ。預貯金などは少なく、遺産総額は相続税の基礎控除の範囲内。
おすすめ:どちらも選択肢になるが、「おしどり夫婦贈与」を検討する価値あり
理由と対策:相続税がかからないため、税金面での比較の重要性は低くなります。この場合、「パートナーへの感謝を形にしたい」「将来、認知症などで判断能力が低下する前に手続きを済ませたい」といった想いを重視して「おしどり夫婦贈与」を選ぶのは非常に良い選択です。ただし、登録免許税などのコストはかかるため、その点は考慮が必要です。
結論:最適な選択はオーダーメイドのシミュレーションから
ここまで見てきたように、「どっちが得か」という問いへの答えは、ご家庭の状況によって全く異なります。最適な選択をするためには、税金の計算だけでなく、ご家族の関係性や将来の希望まで含めた、総合的なシミュレーションが不可欠です。
【ワンストップで解決】おしどり夫婦贈与の手続きは誰に頼む?
おしどり夫婦贈与という素晴らしい制度を利用しようと決めたとき、「具体的に何をすればいいのか?」「誰に相談すればいいのか?」という疑問に突き当たるかと思います。この手続きを完了させるためには、主に3つの異なる専門分野の手続きが必要となります。
不動産の名義変更(贈与登記)
贈与の意思を明確にする「贈与契約書」を作成し、法務局で不動産の名義を正式に配偶者へ変更する「所有権移転登記」を行う必要があります。これは、主に司法書士の専門分野です。
贈与税の申告
この特例の適用を受けるためには、たとえ贈税が0円になる場合でも、必ず税務署へ「贈与税の申告」を行わなければなりません。この税務申告は、税理士の専門分野です。
不動産取得税の軽減措置の申告
贈与後に課税される不動産取得税には、一定の要件を満たすことで税額が大幅に軽減される措置があります。しかし、この軽減措置は自動では適用されず、都道府県税事務所へ申告・申請しなければなりません。この手続きを忘れると、数十万円単位で損をしてしまう可能性があります。
通常、これらの手続きを進めるには、司法書士と税理士、それぞれに個別に連絡・依頼する必要があり、手間や時間がかかってしまいます。
しかし、当事務所にご相談いただければその心配はございません。当事務所の横須賀支店には税理士・司法書士の資格も保有する弁護士が在籍しております。そのため、贈与契約書の作成から、法務局への登記申請、そして税務署への贈与税申告まで、おしどり夫婦贈与に関するすべての手続きを当事務所の弁護士がワンストップでサポートすることが可能です。
窓口が一つになることで、お客様の手間が省けるだけでなく、専門家間のスムーズな連携により、迅速かつ確実な手続きを実現いたします。
当事務所が相続問題で選ばれる理由
当事務所は、皆様の複雑な相続問題を解決するために、他にはない強みを持っています。
①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの相続案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、最適な解決策をご提案します。
②税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
相続問題、特に不動産や多額の財産が関わるケースでは、税務の視点が欠かせません。当事務所横須賀支店には、税理士・司法書士有資格の弁護士が在籍しています。法務と税務、登記の全方面から多角的なアドバイスをして最善の解決を目指します。
③グループ内で連携したワンストップサービス
当事務所は、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者がグループ内に存在するため、各専門家と緊密に連携し、あらゆる手続きをワンストップでサポートすることが可能です。
相続にお困りの方は虎ノ門法律経済事務所にご相談ください
横須賀・三浦・逗子・葉山エリアで、「私たちの場合は、生前贈与と相続、どっちが良いんだろう?」と悩んでいらっしゃる方は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。お客様一人ひとりの状況を丁寧にお伺いし、法務と税務の専門家の視点から、ご家族にとって最も“得”となる選択肢を一緒に見つけさせていただきます。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員