離婚しても元配偶者や子どもは相続できるのか?離婚した子供に相続させない方法や注意点など弁護士が解説
離婚は人生の大きな転換点の一つですが、その後の相続問題について十分に理解している方は多くありません。「離婚したら元配偶者や子どもに相続権はあるのか?」「離婚した子どもに財産を残したくない場合はどうすればよいのか?」といった疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。 離婚と相続の関係は複雑で、適切な対策を講じなければ思わぬトラブルに発展する可能性があります。本記事では、司法書士と税理士資格を有する相続に強い弁護士が離婚後の相続権の有無から、離婚した子どもに相続させない方法まで、詳しく解説します。
離婚と相続の関係
離婚により夫婦関係は終了しますが、相続に関しては元配偶者と子どもで取り扱いが大きく異なります。まずは、離婚が相続にどのような影響を与えるのかを正確に理解することが重要です。
離婚後も相続できる?
離婚後の相続について、元配偶者と子どもを分けて考える必要があります。法的な親子関係と夫婦関係では、離婚による影響が全く異なるためです。
元配偶者の相続権
離婚した元配偶者には相続権は一切ありません。 民法第890条により、配偶者は常に相続人となると規定されていますが、この「配偶者」とは法律上の婚姻関係にある者を指します。離婚により婚姻関係が解消されると、元配偶者は法定相続人ではなくなります。
具体例:
- 夫Aと妻Bが離婚した場合、その後AまたはBが死亡しても、相互に相続権は発生しない
- 離婚後に一方が再婚した場合、新しい配偶者が相続人となる
- 内縁関係や事実婚では、そもそも相続権は発生しない 注意点:離婚が成立していない段階(別居中、離婚調停中、離婚訴訟中)では、まだ法律上の夫婦であるため、相続権は発生します。
子どもの相続権
離婚しても、子どもの相続権は一切変わりません。 親子関係は離婚によって影響を受けないため、子どもは離婚後も両方の親に対して相続権を有し続けます。これは、親権を持たない親に対しても同様です。 法的根拠: 民法第887条により直系卑属(子、孫等)は第1順位の相続人と定められており、親権の有無や養育費の支払い状況に関わらず相続権は維持されます。
具体例:
- 父親Aと母親Bが離婚し、子Cの親権を母親Bが取得
- その後父親Aが死亡した場合、子Cは父親Aの相続人となる
- 父親Aが養育費を一切支払っていなくても、子Cの相続権は変わらない 非嫡出子の場合:婚姻外で生まれた子(非嫡出子)であっても、認知されていれば相続権を有します。
遺産分割と離婚
離婚に関連する財産問題として、離婚時の財産分与と相続における遺産分割があります。これらは全く異なる制度であり、混同しやすい点について注意が必要です。
離婚時の財産分与と遺産分割の違い
離婚時の財産分与と相続時の遺産分割は、目的、対象財産、分配方法等が大きく異なります。
財産分与の特徴
目的:婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産の清算
対象財産:婚姻期間中に取得した財産(共有財産)
特有財産(結婚前の財産、相続・贈与で取得した財産)は原則対象外
分配割合:原則として2分の1ずつ 特別な事情がある場合は修正される場合あり
請求期限:離婚成立から2年以内
遺産分割の特徴
目的:被相続人の死亡により発生した相続財産の分配
対象財産:被相続人名義の全財産 債務も含む
分配割合:法定相続分が基準
遺言がある場合は遺言が優先
特別受益、寄与分等による修正あり 請求期限:法定の期限はないが、相続税申告期限(10か月)等の制約あり
離婚協議中や離婚調停中における相続発生時の注意点
離婚手続き中に夫婦の一方が死亡した場合、複雑な法的問題が生じる可能性があります。
離婚成立前の相続権
離婚前に死亡した場合、財産分与請求権は消滅しますが、相続権により財産を取得できる可能性があります。相続により取得する財産と財産分与で取得予定だった財産が重複する場合があること、他の相続人(子ども、親等)との遺産分割協議が必要となることについて注意が必要です。
実務上の対応策
遺言書の作成:離婚を検討している場合は、万が一の事態に備えて遺言書を作成することを検討すべきです。 生命保険の見直し:受益者が配偶者となっている生命保険は、早急に見直しを行う必要があります。
離婚した子どもに相続させない方法
離婚により親子関係が悪化した場合や、再婚により新しい家族ができた場合、離婚した元配偶者との子どもに財産を相続させたくないと考える方もいらっしゃいます。ただし、子どもの相続権は法的に保護されているため、完全に排除することは困難です。
遺言による相続分の指定
遺言書により、特定の相続人の相続分を減らしたり、他の相続人の相続分を増やしたりすることができます。 注意点:
子どもには遺留分(法定相続分の1/2)があります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障された最低限の相続分のことで、遺言によっても奪うことができない権利です。子どもの場合、本来の法定相続分の2分の1が遺留分として保護されます。
遺留分を侵害する遺言も有効だが、遺留分侵害額請求の対象となります。
遺留分侵害額請求の時効は1年です。なお、相続開始から10年経過すると除斥期間により請求できません。
生命保険の活用
生命保険金は原則として相続財産ではないため、受取人を調整することで争いなく財産を移転できる可能性があります。
生命保険金の法的性質
生命保険金は原則として受益者の固有の権利であり、相続財産ではないため遺産分割の対象外となります。ただし、特別受益として扱われる場合もあります。
活用方法
受取人の変更により、元配偶者との子どもを受取人から外し、現在の配偶者や子どもを受取人に指定することができます。 ただし、保険金額が多額の場合は特別受益として遺留分計算に影響する可能性があること、相続税法上のみなし相続財産として課税対象となること、受取人変更には被保険者の同意が必要であることに注意が必要です。
相続手続きを弁護士に依頼すべき理由
離婚に関連する相続問題は、通常の相続以上に複雑な法的判断が必要となります。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
複雑な法律関係の整理
離婚と相続が関わる事案では、民法の親族法、相続法、税法等の複数の法分野にわたる専門知識が必要です。弁護士により、複雑な法律関係を正確に整理し、適切な対応策を検討できます。
他の相続人との交渉
元配偶者や離婚した子どもとの間で相続に関する交渉が必要となった場合、感情的な対立を避けながら法的に適切な解決を図ることができます。
遺言書等の適切な作成
将来の紛争を避けるため、法的に有効で実効性のある遺言書の作成をサポートします。遺留分等の制約を考慮した最適な内容を提案できます。
税務面でのサポート
相続税、贈与税等の税務面についても、税理士資格を有する弁護士が総合的なアドバイスを提供します。
相続手続きでお困りの方は虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店にご相談ください
虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店は、離婚に関連する相続問題の解決において豊富な実績と経験を有する法律事務所です。複雑な家族関係に起因する相続問題についても、多数の解決事例があります。
当事務所の3つの強み
①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
50年以上にわたる歴史の中で培われた豊富な経験と実績により、離婚に関連する複雑な相続問題にも的確に対応いたします。家族法と相続法の両分野に精通した弁護士が、最適な解決策をご提案します。
②グループ内で連携したワンストップサービス
当事務所では、弁護士だけでなく、税理士、司法書士、不動産鑑定士等の専門家がグループ内で密接に連携しています。遺言書の作成から相続税の申告、不動産登記まで、相続に関するあらゆる手続きをワンストップで対応可能です。
③税理士・司法書士有資格の弁護士が対応
当事務所横須賀支店には、弁護士資格に加えて税理士や司法書士の資格を有する弁護士が在籍しています。法律面だけでなく、税務や登記の観点からも総合的なアドバイスを提供し、より効果的な解決策をご提案できます。
このような方はぜひご相談ください
離婚した元配偶者や子どもの相続権について知りたい
離婚した子どもに財産を相続させたくない
再婚により複雑化した相続関係を整理したい
離婚協議中に相続が発生してしまった
元配偶者との子どもとの間で相続トラブルが発生している
遺言書を作成して将来の紛争を防止したい
初回相談は無料です
当事務所では、離婚に関連する相続問題について初回相談を無料で承っております。まずはお気軽にお電話またはメールにてお問い合わせください。経験豊富な弁護士が、お客様の複雑な状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。 離婚に関連する相続問題は、感情的な側面と法的な複雑さが絡み合う困難な問題です。しかし、適切な専門家のサポートを受けることで、法的リスクを最小限に抑えながら円満な解決を図ることが可能です。虎ノ門法律経済事務所 横須賀支店では、50年以上の経験と実績を活かし、お客様の相続問題の解決を全力でサポートいたします。

広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としている。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員